sparkylinux 2020.09 〜軽快!Debian "bullseye" testing baseのLXQt editionを掘り下げる・・LXQtデスクトップ環境のカスタマイズの要点に関して整理・・




筆者がLXQt環境の設定を初めて検証したのは、いち早くLXQtデスクトップ環境のサポートを開始したこのsparkylinuxからです。

現行sparkylinuxは、大きく分けてdebian 10 "Buster" stableベースと、debian 11 "bullseye" testingベース(semi-rolling)があり、前者には、LXQt、Xfce、後者には、LXQt、Xfceに加えMateデスクトップ環境がサポートされます。

LXQt環境の基本設定に関わる今までの本ブログの内容は、このsparkylinuxによるところが大きく、本ブログでも紹介したLubuntu 20.04 LTSの基本設定の内容は、何回か繰り返したsparkylinuxの設定検証の結果となっています。

どのDistributionであっても、LXQt環境の日本語化に関しては、インストールすれば、日本語化残処理は不要・・というところまではいっておらず、なんらかの残処理は必要な状況となっています。

この中でも、sparkylinux LXQt editionは、初期設定により、概ね日本語化残処理が完了する仕組みを提供しており、日本語環境の完成・・という意味ではLXQt環境を持つDistirbutionの中で最も平易な部類に入ります。

来年になると、Debian 11 "bullseye" stableが登場する事となり、本ブログにおいては、そろそろ、この準備のため、Debian "bullseye" testingベースのDistributionに軸足を移していきますが、今回は、sparkylinux 2020.09 LXQt editionを取り上げ、最新sparkylinuxの主要設定項目を通じて、LXQt環境のカスタマイズの要点に関し、まとめてみます。

基本設定が完了した状態では、LXQt環境って、あまりかっこよくは仕上がりません(^^;。冒頭に上げたスクリーンショットのようなLXQtデスクトップ環境を作るためには、LXQtテーマの変更をどのように行うのか押さえておく必要があります。またLXQt環境の天気予報Widgetは、長い間使えなくなっており、meteo-qtにて代替する必要もあります。

このあたりも、今回の投稿の中でカバーする事にします。

1.概要

1)ベース:Debian "bullseye" testing semi-rolling

2)デスクトップ環境:LXQt 0.14.1

3)カーネル:5.7.0-3-amd64

meltdown/spectre等HW脆弱性緩和策対応度は・・

まず問題の無いレベルとなっています。

2.インストール(MBR/uefiケース)


尚、本体及びブートローダーのインストール先に関しては環境依存となりますので参考になりません。

3.初期設定

初期設定の主要部分については、インストール→再起動→logoin直後に起動される初期設定Windowによって行います。

1)初期設定Windowによる初期設定

以下初期設定Windowでは、システムアップデート/アップグレード、大部分の日本語化残処理を実行します。


OKボタンを押下
OKボタンを押下
→システムアップデート・アップグレードの実行
言語として”Japanese"を選択し、OKボタンを押下
→日本語化残処理の実行
問題となるのは、上記最後のスクリーンショットでOKボタンを押下しても、処理完了の通知が表示されません。Debian "bullseye" testingベースであるため、致し方ありませんが、処理としては実行されます。このため、最後のスクリーンショットでOKボタン押下後、5分程度そのまま放置しておく必要があります。

上記処理終了後、システムアップグレード処理も実行されているため、再起動します。

以上で主要アプリケーションの日本語化が完了し、fcitx-mozcによる日本語入力も可能となります。


2)repositoryの最適化

synapticを使用し、repositoryの最適化処理を行います。これにより、debian repositoryからのソフトウエアインストール及びアップデートにかかる時間を短縮させます。

チェックがついている7行目、8行目のhttp://deb.debian・・をhttp://ftp.jp.debian・・に書き換えます。

最後にSynapticのパッケージの再読込ボタンを押下します。

3)時刻の調整

時刻の調整に関しては、2点ほど設定を行う必要があります。一つはタイムサーバーとの同期を図るntpの機能の置き換え、及び、タイムサーバーとの同期設定とWindowsとのdual boot時のwindows側時刻のズレを収拾する事項です。

① ntpの置き換え

sparkylinux 2020.09 LXQt editionではntpが設定済みですが、これがうまく動作しません。
このため代替手段としてntpを削除し、systemd-timesyncdに置き換えます。

まず、ntpを削除
→sudo apt purge ntp

すると、systemd-timesyncdがインストールされます。

次に、systemd-timesyncdをスタートさせます。
→sudo systemctl start systemd-timesyncd

最後にsystemd-timesyncdのステータスを確認し、無事起動していれば処理終了となります。
→sudo systemctl status systemd-timesyncd




② 時刻同期設定とWindowsとのdual boot時のwindows側時刻のズレを収拾する事項

LXQtコンフィグレーションセンター→日時設定よりタイムサーバーとの同期、並びにdual boot時、sparkylinux使用後にwindowsを使用した際、windows側の時刻のズレを防ぐための設定を行います。

タイムサーバとの同期を行うためには、”ネットワークによる時刻の同期を可能にする(NTP)にチェックを入れます。これにより、systemd-timesyncdにより時刻が同期されます。

次にWindowsとのdual boot構成の場合は、Windows側の時刻のズレを防ぐため、”RTCはローカル時刻です”にチェックを入れます。

以上でOKボタンを押下すれば時刻の調整処理は終了です。

4.日本語化残処理

1)FeatherPadの日本語化

初期設定後、主要アプリケーションの日本語化はほぼ完了しますが、LXQtのテキストeditor FeatherPadについては日本語化されません。


このため、FeatherPadのローカリゼーションパックをインストールします。

→sudo apt install featherpad-l10n

以上で、FeatherPadも日本語化されます。

2)デフォルトフォントの変更(オプション)

この処理はオプションです。筆者は、noto-cjk-jp系フォントをインストールし、これをデフォルトフォントに設定しています。

① noto-cjk-jp系フォントのインストール

→sudo apt install fonts-noto-cjk

② デフォルトフォントの変更

・LXQt外観の設定(LXQtコンフィグレーションセンターから)

フォントを"VL ゴシック"から"Noto Sans CJK JP"に変更します
適用ボタンを押下

・Openbox設定マネージャ→フォント(LXQtコンフィグレーションセンターから)


・各アプリケーションフォント設定例

Firefox

Thunderbird


Libreoffice writer

5.基本設定

1)Composite Managerの設定

一般的にLXQtの透過処理等の各種効果をenableにするためには、Composite managerであるComptonをインストールする必要があります。

sparkylinuxの場合、"compton"ではなくsparkylinux用"sparky-compton"をインストールします。

→sudo apt install sparky-compton

インストールが完了すると、LXQtコンフィグレーションセンター→LXQtセッションの設定→”基本設定”のLXQtモジュールにComptonが表示されるようになりますので、これにチェックを入れ、開始ボタンを押下します。


以上で、本セッションも含め以降のセッションでもWindow効果が効くようになります。

2)Window効果の調整

① 影の表示抑制

PlankやConkyを使用する場合、不要な影が表示され、見苦しくなるケースが発生します。
これらの調整は、LXQtコンフィグレーションセンター→ウインドウ効果→影 から行います。
適用ボタンを押下

上記では、ウインドウクライアントの影と、ドックやパネルの影を表示させないよう抑制させています。これにより、plankやconkyがきれいに表示されるようになります。

② より高度なWindow効果の適用

ハードウエアに依存しますが、描画エンジンをXからGLX(Open GL)に変更するとKDE並の強いWindow効果が得られるようになります。

これは、LXQtコンフィグレーションセンター→ウインドウ効果→その他 から行います。

適用ボタンを押下

LXQtコンフィグレーションセンターに含まれる"ウインドウ効果"で設定を行い、適用ボタンを押下すると、デスクトップ上に何も表示されなくなり、結果、手動での電源断が必要となってしまう現象が発生する事がありますので注意が必要です。

3)LXQtテーマの変更

Xfce等のデスクトップ環境で独自のテーマや、フォントを使用する場合、ホームデディレクトリ直下の .themes、.icons、.fonts各ディレクリ直下に追加テーマやフォントを格納した上で設定変更を行います。ただし、LXQtテーマを新規ダウンロードし、LXQtテーマ変更を行う場合、gnome-look.org等からダウンロード・解凍したLXQtテーマを .themes に格納しても、設定変更の対象とはなりません。

LXQtテーマは自分のホームディレクトリ直下に置く場合、.themesではなく・・

.local/share/lxqt/themes

に置く必要がありますので、注意が必要です。

ちなみに筆者は、ホームディレクトリ直下の .local/share/lxqt/themes には・・
上記のように、gnome-look.orgからダウンロードした5種類LXQtテーマを解凍した上で置いており・・これによってLXQt外観の設定→LXQtテーマから、これら追加LXQtテーマを指定・変更できるようにしています。

4)天気予報Widget

筆者は、どのようなデスクトップ環境であっても天気予報表示機能を追加しますが、LXQtでは、パネルに追加するWidgetがバグのため長年availableになっていません。

このため、筆者は、この代替としてMeteo-qtを多用しています。
このインストールは・・

sudo apt install meteo-qt

インストール後、アプリケーションメニューからmeteo-qtを起動すると、パネル上にMeteo-qtが表示されます。無論、startup(login時自動起動)設定や、天気予報表示地域設定は、Meteo-qtの設定機能を使って指定する必要があります。

注意が必要なのは、meteo-qtを使用する場合、OpenWeatherMapのキーが必要であり、これは、OpenWeatherMapのホームページにて、無料登録する事により(メールアドレス及びパスワード登録)、得る事ができます。


これらを滞りなく行えば、meteo-qtによる指定地域の天気予報表示が可能となります。


6.評価

軽快性:A(描画エンジンをOpenGLに変更するとWindow効果がかなりかかりますので操作上の軽快性は落ちます)、機能性:A、安定性:B、インストール→初期設定→日本語化残処理の平易性:B、基本設定の平易性:B

となります。さすがに、sparkylinux 2020.09は、Debian testing ベースですので、安定性はBです。安定性を望む場合は、Debian stable版の使用をお勧めします。

今回はntpの設定箇所で思わずどうしようかな・・と悩みましたが、代替を使用し回避しています。このため、通常sparkylinuxのインストール〜日本語化残処理の平易性評価はAとなりますが、今回、Bに落としています。

LXQtの設定に関しては、LXQtの歴史がまだかなり浅い事もあって、あまり周知されていない事が多いように見受けられます。またその挙動も若干あやしい箇所があるため、これらの理由から、LXDEユーザーは移行にためらうケースも多いようです。

と・・言うことで、今回は、最新のsparkylinuxを使用し、LXQtデスクトップ環境のカスタマイズの要点に関してまとめてみました。login直後のメモリー使用量は、400MB前半となりますので、十分軽いデスクトップ環境となります。

若干設定上の留意事項もあり、やはりLinux中上級者向けDistributionとなりますが、これからLXQt環境を使うあるいは試したいユーザにとって、LXQtデスクトップ環境を比較的長くサポートしているsparkylinuxは、お勧めの一本となります。

*注意:冒頭及び末尾のスクリーンショットは、筆者カスタマイズ後のsparkylinux 2020.09 LXQt editionのデスクトップとなります。オリジナルとは異なりますので注意ください。





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