コロナ対策から起因した在宅勤務やその他のリモートワーク・・故に、最近特に注目を浴びているChromeBook・・・そしてChrome OSですが、ChromeをChromiumに変え、Chrome OSのオープンソース版としてNeverwareからリリースされているものが、CloudReadyとなります。双方とも、ブートモードとしてGPT/uefi構成が必須である点やLinux環境及びそのアプリケーションをインストール及び使用できる点は同じですが、Playストアからアンドロイドアプリケーションのインストール及び使用が可能なChrome OSに対して、CloudReadyでは、特殊な方法を使わない限りこれができないという事項が大きな相違点としてあります。
特に、CloudReadyの場合、Playストアが使えない事から、クラウドアプリケーションを使用する事が前提のOSとなるため、Chromiumを使用して、Googleクラウドアプリケーションや、office online等のクラウドサービスを駆使し、業務を進めて行く事が基本です。ただ、さすがにChromiumのみだと辛い場面も少なくなく、このような場面に対応できるLinuxは、かなり強力にCloudReadyの機能強化に貢献する事になります。
さて、CloudReadyではLinux環境及びそのアプリケーションのインストール及び利用が可能ですが、Linux環境のインストール自体がまだベータ機能であり、品質の面ではまだ危ない状況です。また、インストールされるLinux環境の実体は制限付きのDebian 10 "Buster" stableであり、repositoryの最適化等はできません。さらにこのLinuxのデフォルトディスプレイサーバーがWaylandにセットされているという事実があり、特にChrome OS、CloudReady両OSのLinux環境下における幾つかのGTKアプリケーションの挙動に関しては、native Wayland上で問題があるため、GTKアプリケーションがX11 backend(Compatibility mode)で動作するように環境変数での対応が必要となっています(現在多くのdistributionのGnome3 wayland環境で未だこのCompatibility modeが使用されている事は周知の通りです)。
このあたりの設定を誤ると、GTKアプリケーションを起動しても、その表示が安定せず、アプリケーションが表示/非表示を繰り返す等各種問題が多発します。
これらをうまく設定すると、CloudReadyは、以下のようなLinuxとの共存環境が構築できます。
左側→CloudReadyのFile Manager起動、右側→DebianのFile manager Thunar起動 |
左側→CloudReadyのChromium起動、右側→DebianのFirefox ESR起動 |
CloudRreadyのgoogle Doc起動→input methodはCloudReady側を使用 |
⇒CloudReadyのChromium上では、Debianで設定したInput methodは使用できません
DebianのLibreoffice起動→input methodはDebianのfcitx-mozcを使用 |
⇒CloudReady上で起動されたLinuxアプリでは、CloudReadyのInput methodは使用できません
またCloudReadyのフォルダー共有機能を利用して、インストールしたLinux環境とのファイル共有も可能・・。
右側のThunar(Debian)で、共有されたCloudReadyのダウンロードディレクトリを参照しています。左側は、CloudReadyのファイルマネージャでCloudReadyのダウンロードディレクトリを参照しています |
と・・言う事で、今回は、Chrome OSのオープンソース版CloudReadyに対し、Linux環境のインストールとその日本語化、日本語input methodのインストール及びその設定内容を中心に投稿を進めていきます。
本設定で使用するマシンは、おそらく今回限りの登場となりますが、T480sや、X250ではなく、業務用として使用しているThinkpad E570となります。構成は以下の通りです。
CPU:Core i5 7200u
メモリー: 16GB
内蔵SSD:500GBx2→Windows10とLinuxのデュアルブート
ブートモード:GPT/eufi構成
ただし、CloudReadyへのLinux環境のインストール自体がベータ機能であるため、本稿の内容は今後逐次変更されていく可能性があります。したがって、本稿の内容は、現時点で最新のCloudReady stableのバージョン83.4.27 (Home Build) stable-channel 64-bit向けに限定します。
最後に、今回の投稿は、LinuxアプリケーションをCloudReady上で動作可能とするための内容とはなりますが、全てのDebian 10 "Buster" Stable上のアプリケーションの正常な挙動を目指したものではありません。ベータという問題もありますので、ここでは、Linuxアプリケーションのうち、debian repositoryにあるFirefox-esr、Thunderbird、Libreoffice Writer、fcitx-configtool、fcitx-mozc、GIMP、VLC、Thunar、geditをCloudReady上で動作可能な状態に持っていきます(あくまでも動作可能な状態です)。他のlinuxアプリケーションについても動作しない、あるいは挙動がおかしい状況も発生する可能性がありますので注意ください。
1.CloudReadyインストール
CloudReadyのインストール・基本設定が本稿の目的ではありませんので、これはネットでぐぐっていただく事とします。現在、非常に多くのCloudReady、Chrome OSに関する記事や投稿がネット上にありますのでこれを探してご覧ください。ただし主要な注意事項のみ以下に示します。
1) インストール要件に関して
最も重要な要件は、マシンのブートモードが、GPT/uefi構成となっている点です。加えて、secure bootは事前にBios設定でOffにしておく事が必要です。マシンのブートモードとしてGPT/uefi構成をサポートしていないマシンの場合は、CloudReadyのインストール/利用はできません。
また、当然ではありますが、利用可能なgoogleアカウントを保有している事が必要です。
2) インストール時の留意事項に関して
以下CloudReadyホームページから、USB Maker(USB Makerはexe形式で、Windows7以降のWindowsで利用可能です)をダウンロードします。USB Makerは、Windows上でCloudReadyダウンロード→USBスティックにCloudReadyをインストールするといった一連の機能性を提供します。この形態でCloudReadyを使用するならば、お持ちの機器の内蔵HDD/SSDにインストールされた他OSには影響を与えませんので、まずはこの利用形態をオススメします。但し、CloudReady上でベータのLinuxインストール機能を使用する場合には、少なくとも16GB、できれば32GB程度の容量を持つUSBスティックの利用が安全です。
上記の流れでUSBにインストールしたCloudReadyを起動し、幾つかの設定後、表示されるCloudReadyのデスクトップにおいて、”Install OS”機能を用いる事により、お持ちの機器の内蔵SSD/HDDにCloudReadyのインストールが可能です。
ただしこれはインストール先の指定は行えず、1基の内蔵HDDあるいはSSD全ての領域を使用します。したがって、この処理には細心の注意が必要です。
筆者は ThinkPad E570に2基のSSDを内蔵させ、Windows10とLinuxのデュアルブートを実現していましたが、今回、本CloudReady上でインストールしたLinuxの設定を行うにあたって、Windows10をインストールしたSSDは事前にE570から取り外し、USBスティックにインストールしたCloudReadyから、内蔵させた残りのLinux側のSSDに対し、CloudReadyのインストールを実行しています。これが最も間違いが無い方法となります。
2.CloudReadyへのLinux環境インストール
CloudReadyデスクトップのBottomに配置されるパネルの右端・・時刻表示されている箇所をマウス左ボタンクリックして表示される各種機能一覧パネルの中の”設定”アイコン(歯車の形状のアイコン・・以下矢印の箇所)をクリックし、CloudReady設定パネルを表示させます。
↓
Linux(ベータ版)の”Onにする”ボタンを押下すると Linuxのインストールが開始されます |
↓
↓
ユーザアカウントを設定します。ここはデフォルト値を変更する必要はありません |
↓
以上でLinux環境のインストールは完了です。
3.Linux初期設定
本ターミナルを使って、Linux初期設定、Linux日本語化、Linuxアプリケーションのインストールを実行していきます。
CroudReadyデスクトップのBottomに配置されたパネル上に表示されているターミナルアイコンを押下する事により、ターミナルが起動しますが、ここからLinuxがコマンドベースで利用可能です。
まず、前述したようにrepositoryの最適化作業は行なえないため、初期設定ではシステムアップデート/アップグレード作業のみを行います。
→ sudo apt update && sudo apt upgrade
4.Linux日本語化
ここで一旦、ターミナルを再度shutdown(sudo shutdown -h now)し、念の為Chrome OSを再起動します。
1)日本語フォントのインストールと、Localeの変更
インストールされるDebianに関しては、キーボード定義も含め英語バージョンとなっているため、日本語化されたLinuxアプリケーションの利用のためには、日本語化(ロケールの変更等)が必要です。ただし、キーボードに関してはJapaneseにしなくても、本Linux環境では入力上問題が発生しませんので、キーボード定義に関してはここでは変えません。
第一段階の日本語化作業として、日本語フォント(fonts-noto-cjk)及びDebian日本語化パッケージのインストールとLocaleの変更作業を行います。
① 日本語フォント、Debian日本語化パッケージのインストール
日本語フォントとしては、noto-cjk系フォント(fonts-noto-cjk)のみをここではインストールします。一般的にはこれで使用上困る事はありません。合わせてDebian日本語化パッケージ(task-japanese)をインストールします。
→ sudo apt install task-japanese fonts-noto-cjk
② ロケールの変更
これは以下コマンドを投入して行います。
→sudo dpkg-reconfigure locales
↓
ja_JP.UTF-8 UTF8にチェックを入れます |
↓
↓
上記状態でOKボタンを押下します →この際ターミナル表示が崩れますので一旦ターミナルをlogoutして閉じ、再度CloudReady デスクトップ bottomに配置されるパネル上のターミナルアイコンを押下して、ターミナルを起動します。 |
次に以下コマンドを順次投入して、ロケール設定を完了させます。
sudo localectl set-locale LANG=ja_JP.UTF-8 LANGUAGE="ja_JP:ja"
source /etc/default/locale
③ 日本語input method(fcitx-mozc)のインストールと自動起動設定
fcitx-mozcのインストールは以下コマンドを投入します。
→ sudo apt install fcitx-mozc
次にfcitxの自動起動設定として以下コマンドを投入し、自分のホームディレクト直下の、.sommelierrcの内容に、/usr/bin/fcitx-autostart を追記します。
→ echo "/usr/bin/fcitx-autostart" >> ~/.sommelierrc
④ fcitx及びGTKアプリケーションに関する環境変数の設定処理
fcitx及び、GTKアプリケーションの動作には環境変数の設定が必要です。GTKアプリケーションについては、wayland compatibility mode(X11 backend=Xwayland)で動作するよう定義します(ただしこれは、X及びWayland間の全ての互換性を保証するものではありません)。
定義が必要な環境変数としては以下の通り。
*fcitx
Environment="GTK_IM_MODULE=fcitx"
Environment="QT_IM_MODULE=fcitx"
Environment="XMODIFIERS=@im=fcitx"
*GTKアプリケーション
Environment="GDK_BACKEND=x11"
上記の環境変数を・・
/etc/systemd/user/cros-garcon.service.d/cros-garcon-override.conf
に追記します。
追記はvimか、nano等を使用して・・
(nanoを使用する場合は追加インストールが必要です→sudo apt install nano)。
以下はnanoを使用しています。
↓
これで大部分の日本語化処理は終了です、ここで一旦ターミナルをシャットダウン(sudo shutdown now)し、念の為、CloudReadyを再起動します。
⑤ fcitx-configtoolによるfcitx最終設定処理
次に再起動後のCloudReadyにて再度ターミナルを起動し、ターミナルにて以下コマンドを投入します。
→ fcitx-configtool
以上でfcitx-configtoolが起動します。
fcitx-configtoolに関しては今まで何回か投稿しており、基本的な設定内容は同じです。
なお、半角/全角キーや、Ctrl+スペースキー押下による日本語入力モードへの切り替えに関しては、CloudReady側の入力切り替えと同一となりますので、fcitx-mozcによる日本語入力モードへの切り替えは、スペースキー +Altキーに変更しています。
またLinuxにインストールしたLibreoffice等を使用して日本語入力を行おうとすると、fcitx-mozcによるインライン入力ができない状態となるため、”アドオン”タグ→Advancedにチェック→Fcitx XIM Frontend Provides XIM Supportを選択→”設定”ボタン押下→”XIMでOn The Spotスタイルを使う”にチェックを入れています。これでインライン入力が可能となります。
上記を含めたfcitx-configtoolの具体的な設定結果は以下を参照・・。
前述したwayland compatibility modeに関する環境変数/"Environment="GDK_BACKEND=x11"が正確にセットされていない場合、fcitx-configtoolは表示、非表示を繰り返し、オペレーションが行えない状況が多発します。本状況が発生した場合、/etc/systemd/user/cros-garcon.service.d/cros-garcon-override.conf の内容を再度、要確認という事になります。
5. Linuxアプリケーションのインストールと実行
CloudReady再起動後、ターミナルを起動し、以下コマンドを順次投入して、Linuxアプリケーションをインストールしていきます。
*Libreoffice→sudo apt install libreoffice libreoffice-l10n-ja
*Thuderbird→sudo apt install thunderbird thunderbird-l10n-ja
*gedit→sudo apt install gedit
*Firefox-esr→sudo apt install firefox-esr firefox-esr-l10n-ja
*GIMP→sudo apt install gimp
*Thunar→sudo apt install thunar
*VLC→sudo apt install vlc
これらをインストールすると、CloudReadyのアプリケーションパネルにも各Linuxアプリケーションアイコンが追加され、Linuxアプリケーションに紐付けされたアイコンをクリックするだけで、当該LinuxアプリケーションがCloudReady上で起動します。このあたりは良く出来ています。
Linuxアプリを選択 |
↓
Linux側でインストールされたアプリケーション一覧が表示されます 使用したいアプリケーションアイコンをクリックすると当該Linuxアプリが起動します。 |
↓
6. 評価
CloudReady自体の安定性、インストール→初期設定(ここにCloudReadyの日本語化も含まれます)は極めて平易であり、Sランク評価です。初心者でも可能な作業となります。また安定性や、軽快性も申し分なく、インストール→初期設定の平易性と同様、Sランク評価となります。
CloudReady自体がlinuxベースですが、アプリケーションと呼べるものはChromium以外ほとんどなく、Chromiumの使い方を極め、クラウドアプリケーションを駆使し、作業効率を上げていく事が必須のOSです。
機能性の補完を行うためDebianのインストールや、そのアプリケーションの利用を可能にしていますが、安定性の面で問題がある点(ただ、まだベータなんですが・・)や、日本語化作業や、環境変数設定、Linuxアプリケーションのインストールは全てコマンドベースの手作業となるため、このあたりは、Linux上級者向けとなってきます。
現行のCloudReady上のベータ版Linuxの利用は、上述したとおり、利用できるまでの設定内容が煩雑である点、linuxアプリの安定性に難がある事から積極的にはオススメ出来ませんが、正式版において、CloudReadyのロケールを見た上で、Linuxのインストールや日本語input methodを含む日本語化が自動的に行われるようになれば、かなりいけてるソリューションになってくるものと思います。
CloudReady環境から容易にLinuxアプリケーションの起動が行え、Linux環境とのファイル共有機能もあるという点は◎、これに設定の平易性と安定性(品質)が追従すると鬼に金棒・・となるわけですが、いずれにしても今後が非常に楽しみです。
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