純正Chrome OS でLinuxアプリケーションを動作させよう! 〜Chrome OS 83.0.4103.119(Official Build) (64 ビット)上のLinux環境構築と日本語化・・・



Chromebookに標準搭載されるOperating System :Chrome OSですが、OpenSource版のCloudReady(Chromium OSベース)とは、外観は一緒なものの、pre-installされる機能性や、Playストアから追加インストール可能なAndroidアプリケーションの豊富さは、CloudReadyのアプリケーションと呼べるものがほぼChromiumのみに対し、純正Chrome OSの大きなアドバンテージとなっています。



業務で使用する場合、まだ、マイクロソフトOfficeのお世話になる事も多く、Office Onlineではなく、officeをPlayストアーからインストール及び利用できる点は非常に大きなメリットとなっています(ただし、Microsoft 365のサブスクリプションは必要です)。

Chrome OSのアプリケーション等の品揃えという観点から言えば、Linux関連のアプリケーションを追加で動作させる意味は?・・という必要性の問題はありますが、とりあえず今回もChrome OS上でLinux環境をインストールし、Chrome OSデスクトップ上で日本語化されたLinuxアプリケーションを動作させるためのステップに関し投稿します。

本ステップの内容は、ほぼCloudReadyと同じですが、環境変数の設定内容が唯一の相違点となります。また、CloudReadyで構築したLinux環境と比較すると、Chrome OSのLinux環境のほうが安定性(品質)が若干高く、環境変数を設定し忘れたとしても、エラーは履くもののアプリケーションが表示・非表示を繰り返すような現象は現時点で発生しません。

尚、Linuxインストール自体が、Chrome OSのベータ機能であるため、今後設定内容が変更される可能性があります。このため、本稿の内容は、Chrome OS 83.0.4103.119(Official Build) (64 ビット)向けに限定します。


また、本稿の内容は、Chrome OS上でLinuxのすべてのアプリケーションの動作を目指すものではありません。Linuxのlibreoffice、gedit、Firefox、Thunderbird、VLC、Thunarという限られたアプリケーションの動作を実現させます(ただし、各アプリのすべての機能が正常動作するかどうかは別の問題です)。他のLinuxアプリケーションに関してはうまく起動しない可能性もありますので、この点は注意ください。

最後に本稿の内容は、CloudReady上でLinux環境を構築する流れとほぼ共通していますので、本ブログのCloudReady投稿記事を参照しながら設定を進めて行く事をお勧めします(本稿の設定内容で、CloudReadyと同じ箇所は、かなり記述を省略しているため)。

1.Chrome OSへのLinux環境のインストール

CloudReadyと全く同じ流れで設定→Linux(ベータ)をOnにし、Chrome OS上にLinux環境を構築します。

ここでインストールされるLinuxはDebian 10.5となります。

2.Linux初期設定

CloudReadyと同様、repositoryの最適化処理は行えませんので、ターミナルにてシステムアップデート&アップグレードのみ実行します。

→sudo apt update && sudo apt upgrade


3.Linux日本語化と環境変数の定義

1)日本語フォント及びDebian日本語化パッケージのインストールと、Localeの変更

① 日本語フォント及びDebian日本語化パッケージのインストール

CloudReadyと同様、ターミナルを使って・・
sudo apt install task-japanese fonts-noto-cjk

② ロケールの変更

CloudReadyと同様、ターミナルを使って
sudo dpkg-reconfigure locales


次に以下コマンドをターミナルにて順次投入し、ロケール設定を完了させます。

sudo localectl set-locale LANG=ja_JP.UTF-8 LANGUAGE="ja_JP:ja"
source /etc/default/locale

③ 日本語input method(fcitx-mozc)のインストールと自動起動設定

CloudReadyと同様、fcitx-mozcのインストールは以下コマンドをターミナルにて投入します。

→ sudo apt install fcitx-mozc

次にfcitxの自動起動設定として以下コマンドを投入し、自分のホームディレクト直下の、.sommelierrcの内容に、/usr/bin/fcitx-autostart を追記します。

→ echo "/usr/bin/fcitx-autostart" >> ~/.sommelierrc

④ GTKアプリケーションに関する環境変数の設定処理

この環境変数の設定処理の箇所のみ、CloudReadyとは異なります。
実際、前述した③までの処理が終わると、fcitxの環境変数は自動設定されますので、fcitxの環境変数の設定は不要です。

このため、GTKアプリケーショを、wayland compatibility mode(X11 backend=Xwayland)で動作させる環境変数定義のみ行います(ただしこれは、X及びWayland間の全ての互換性を保証するものではありません)。
Environment="GDK_BACKEND=x11"を/etc/systemd/user/cros-garcon.service.d/cros-garcon-override.confに追加して保存。


以上処理終了後、一旦ターミナルをshutdown(sudo shutdown -h now)し、念の為、Chrome OSを再起動します。

⑤ fcitx-configtoolによるfcitx最終設定処理

次に再起動後のChrome OSにて再度ターミナルを起動し、ターミナルにて以下コマンドを投入します。

→ fcitx-configtool

以上でfcitx-configtoolが起動します。

fcitx-mozcによるLinux側の日本語入力モードへの切り替えは、スペースキー +Altキーに変更しています。

またLinuxにインストールしたLibreoffice等を使用して日本語入力を行おうとすると、fcitx-mozcによるインライン入力ができない状態となるため、”アドオン”タグ→Advancedにチェック→Fcitx XIM Frontend Provides XIM Supportを選択→”設定”ボタン押下→”XIMでOn The Spotスタイルを使う”にチェックを入れています。これでインライン入力が可能となります。

上記を含めたfcitx-configtoolの具体的な設定結果は以下を参照・・。



ここで一旦、ターミナルを再度shutdown(sudo shutdown -h now)し、念の為Chrome OSを再起動します。

4. Linuxアプリケーションのインストールと実行

Chrome OS再起動後、ターミナルを起動し、以下コマンドを順次投入して、Linuxアプリケーションをインストールしていきます。

*Libreoffice→sudo apt install libreoffice libreoffice-l10n-ja

*Thuderbird→sudo apt install thunderbird thunderbird-l10n-ja

*gedit→sudo apt install gedit

*Firefox-esr→sudo apt install firefox-esr firefox-esr-l10n-ja

*GIMP→sudo apt install gimp

*Thunar→sudo apt install thunar

*VLC→sudo apt install vlc

以上処理が終了すると、Chrome OSのアプリケーションパネルにLinuxアプリフォルダが作成され、この中にインストールしたLinuxアプリケーションが表示されます。ここからマウスクリックでLinuxアプリケーションが起動できます。


起動されたLinuxアプリケーションは、Chrome OSデスクトップ上に表示されますが、無論fcitx-mozcによる日本語入力も可能となります。
(Linuxアプリ上では、Chrome OSのinput methodは使用できません。逆に、Chrome OSのアプリ上(例えばplayストアからダウンロードしたアプリやChrome OSに搭載されたChrome上等)ではLinuxのfcitx-mozcによる日本語入力は行なえません)。

Chrome OSデスクトップ上でDebianのGIMPとLibreofficeを起動している様子

5. 最後に・・

前々回にはChrome OSのOpenSource版フリーダウンロード&利用が可能なCloudReady(Chromium OSベース)Home上でのLinux環境構築、日本語化、日本語化されたアプリケーションの利用に関し投稿しましたが、今回は純正Chrome OS上で同じ事をやってみました。

結論として、純正Chrome OSのLinux環境の方がCloudReadyよりもfcitx-mozcの環境変数設定が不要な分できが良いです。また、”Environment="GDK_BACKEND=x11"を設定し忘れたとしても、アプリケーションWindowが表示・非表示を繰り返すというような現象は発生しませんでした(エラーを履きますのでEnvironment="GDK_BACKEND=x11の設定は必要です)。

果たして、Chrome OSにLinuxアプリケーションを動作させる意味があるのか・・という点ですが、これは、playストアからダウンロードしてそれで足りるようならば、不要という事になります。ただし、playストアにはLinuxのGIMPに相当するアプリとしてxgimpがありますが、機能性は遥かにLinuxのGIMPの方が高いため、画像処理等で高度な処理が必要な場合は、playストアの無料アプリよりも、Linux側のアプリケーションの方が分があります(本投稿内容でLinux側GIMPを起動した場合、GIMPインターフェースの中でボタンが押せない箇所があったりしますので注意は必要ですが・・特にfilterの箇所)。

まだベータフェーズのChrome OSのLinuxインストールとその環境ですが、割に品質は高いため、オフィシャルリリースされた際のLinux環境がどのような出来になるのか非常に楽しみな所です。

尚、Chrome OSを一般的なPCにインストールする事は現時点で可能ですが、googleの利用規約及び、使用権に抵触する危険性の有無が確認できませんでしたので、本ブログではChrome OSのPCインストールに関する投稿はいたしません。Chrome OSの大部分のソースコードについてはOpen化されていますが、バイナリー化されたChrome OSは、Chrombook組み込み型のChromebook向け専用OSであり、これを使用するにあたっては、Googleの利用規約、使用権に従う必要があります。当方の問題ではありますが、google利用規約、使用権に目を通す時間がないため、本ブログでは取り上げない事にした次第です。

PCへのFreeインストール&利用に関しては、CloudReady home edition(Chromium OSベース)の方をオススメ致します。





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