Windows 10 Pro・Hyper-V仮想環境で、開発者向け Ubuntu base Pop!_OS 18.10を試す!

ご要望がありましたので、今回は、System76が開発・提供する米国産Ubuntu base Pop!_OS 18.10を取り上げてみます。

さて、筆者は、Windows10と、Linuxのマルチブート環境を作る際に、UEFI+GPTではなく、BIOS+MBR(UEFIをレガシーモードで立ち上げる)の環境でeasybcd2.3を利用しマルチブート環境を構築しています。これによってWindows10のブートローダーを使用し、ブート時に各種Linuxと、Windows 10を切り替えながら利用する事を可能にしています。

このマルチブート環境では、linux本体をインストールするパーティションにLinuxのブートローダーを共にインストールする必要があり、ブートローダーのインストール先を指定できない・・例えば、Pop!_OSや、Kail linux等は、この仕組みは使えません。

したがって、今回は、Windows 10 ProのHyper-Vを使用して仮想環境にPop!_OS 18.10をインストールし、日本語化を図る流れを投稿していきます。仮想環境ですので軽快性に関する厳密な評価は今回できません。

まず筆者のWindows 10 ProのEditionですが、悪名高き(笑、バージョン1809・・すなわちWindows 10 October 2018 updateとなります。

このバージョンでは、”Hyper-V クイック作成”という仮想環境の簡易作成機能が使えますが、これを使ってしまうと、仮想環境用領域としてSSDの容量を結構確保しちゃうため、手動での作成を行います。

さてまずは、今回の題材であるPop!_OS 18.10に関して若干紹介をしておきます。


1.Pop!_OS 18.10

System76が開発・提供する最新のPop!_OS 18.10は、Ubuntu 18.10ベースであり、Ubuntuの最新機能を取り入れたうえで、Ubuntuではサポートしきれない最新HWのサポートをドライバーの独自提供によって行っています。また、どちらかといえば、デベロッパー(開発者)向けUbuntu baseであり、そのためのツール群のインストールが、System76のrepositoryを経由して可能となっているのが特徴的です(例えば機械学習向けライブラリTensorFlow(+CUDA)等)。言語や、ライブラリの提供だけではなく開発の効率化、生産性向上を狙ったLinux環境となります。

したがって、一般使用向けという性格ではありませんが、最新HWを持っている場合でドライバーのサポートがいまいち・・というケースでは使用する事も考慮に入れたほうが良いかもしれません。

またセキュリティ面でも、インストールの際に、HDD全体の暗号化を行う機能も提供されているため、開発環境における情報漏洩等に対応している事も特徴的な点です。最新のfirmwareやセキュリティアップデート等の提供も迅速に行われますので、セキュリティ面ではかなり◎でしょう。

1)カーネルバージョン:4.18.0-11

2)Gnomeバージョン:3.30.1

触った感じでは、今はなき(16.xは存在しますが・・)Ubuntu Gnomeですね・・これは。したがって、軽快性という面ではあまり期待できません(仮想環境で動作させていますので、軽快性はもともとありませんが、ダイレクトにSSDにインストールしたとしても、古いマシンで動作させるのはかなり厳しいものと思います)。

では早速、インストール及び日本語化、基本設定に関して投稿を進めていきます。

2.Windows 10 ProでのHyper-Vの準備

1)Hyper-Vサービスのセットアップ

Hyper-Vは、Windows10 Homeでは使用できません。Windows 10 Proでは利用可能な仮想化機能ですが、使えるようにための設定を事前に行う必要があります。

コントロールパネル→プログラム→プログラムと機能と選択していき、最後に"Windowsの機能の有効化または無効化”を選択して以下のように"Hyper-V"にチェックを入れます。
これで、OKボタンを押せば、Hyper-Vのセットアップが行われます。

2)仮想マシンの作成

まず、Hyper-Vマネージャーを立ち上げます。

Hyper-VマネージャーWindowの右側に”操作”の欄があるため、”新規”→”仮想マシンの作成”と選択します。これで仮想マシンの作成プロセスが起動します。
まず仮想マシンの名前を入力します。ここではPop_OS 18.10と入力しています。

次に世代を指定します。ここでは第一世代を指定します。

次に仮想マシンが使用するメモリですが、ここは4GBを指定しています(筆者のマシンは8GBのため、この値でもそこそこ大丈夫ですが、この箇所の指定はマシンの搭載メモリ容量によります)。

ネットワーク構成はDefault Switchを選択・・

仮想ハードディスクのサイズは30GBを設定しています。

Pop!_OSのホームからダウンロードしたISOファイルを”イメージファイル”として選択します。

 最終確認をして”完了ボタン”を押します。

これで仮想マシンの作成は終了です。

3.仮想マシンの起動とPop!_OS 18.10のインストール

仮想マシン作成直後のスクリーンショットは以下のようになっています。

出来上がった仮想マシン”Pop_OS 18.10"が状態”Off”になっています。この箇所をダブルクリックすると、以下スクリーンショットのようなWindowが立ち上がります。
上記Windowの中の”起動”ボタンを押します。これで、仮想マシンが起動し、Pop!_OS 18.10のインストールプロシジャーが開始されます。
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以上です。上記の最後のスクリーンショットで”デバイスを再起動”ボタンを押すと、仮想マシンが再起動され、次に、ID/パスワードやオンラインアカウントの設定画面となり、設定後、再度、再起動してPop!_OS 18.10のlogin画面が表示されます。

やはり、インストールプロセスは、Ubuntu baseで一般的になっているubiquityとはかなり異なっています。

4.Hyper-V:ゲストOS Pop!_OS 18.10のresolutionの再設定

Hyper-V仮想環境にPop!_OS 18.10をインストールすると、ゲストOSであるPop_OS 18.10のresolutionいわゆる解像度がデフォルトでは、1280x1024(4:3)に固定されます。

筆者のマシンの場合は解像度が1600x900であるため、1280x1024に一番近い4:3の解像度1152x864に固定されます。これはどのLinuxを使用しても同じ現象が発生します。

Ubuntu baseの場合、これは、Grub2設定ファイル(/etc/default/grub)を修正する事によって収拾できます。

具体的にはPop!_OS 18.10インストール後、Pop!_OS 18.10上で以下の処理を行います。

1)/etc/default/grub (grub2コンフィグファイル)の書き換え

上記コンフィグファイルの中で、

GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT="quiet splash" 

の行がありますので、これを以下のように修正します。

GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT="quiet splash video=hyperv_fb:1600x900"

1600x900の箇所は筆者のマシンの最大解像度を書いていますので、指定する数値はお持ちのマシンにより異なります。
修正し終えたら上書き保存します(上記スクリーンショットでは、筆者は、GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT="quiet splash"の行をコメントアウトしてます)。

ちなみに  GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT は、通常起動の場合に、カーネルのコマンドラインオプションへ追加するオプションを指定するためのパラメーターとなっています。

2)grub2コンフィグファイルの修正を反映する

スクリーンショットのように、sudo update-grub コマンドを叩いて、Pop!_OS 18.10に修正内容を反映(具体的にはカーネルに反映)させます。

以上で、Pop!_OS 18.10再起動すれば、指定解像度(筆者の場合は1600x900)で、表示されるようになります。

5.Pop!_OS 18.10の日本語化残処理と基本設定

1)システムアップデート/アップグレード

まずはsystem update/upgradeを行います。必ずこのステップを踏む事が重要です。日本語language supportのアップデートが行われ、日本語化される事もままあるためです。

開発環境であるため、ここはコマンドで・・

2)日本語化残処理

必要なjapanese-language-packは日本語input method(iBus-Mozc)を含めてインストールプロセスの中で導入済みとなりますが、初期状態では、iBus-Mozcは立ち上がりません。

このため、”設定”から”地域と言語”に入ります。

①不要language packの削除

”地域と言語”のWindowから、”インストールされている言語の管理”を選択し、language supportを確認します。
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 明らかに日本語と英語以外のlanguage-packがインストールされているため、”言語のインストールと削除”ボタンを押して、日本語と英語以外のチェックを外し、”適用”ボタンを押します。
 これでlanguage-packは日本語と英語のみとなり、不要なアップデートが今後なくなります。

最後に念の為、”キーボード入力に使うIMシステム”がiBusになっている事を確認して、”システム全体に適用”ボタンを押します。
これで日本語設定に関するベースラインの残処理は終わりです。

②iBus-Mozcを立ち上げる

 ”地域と言語”のWindowで、入力ソースとして”日本語”が表示されています。表示されている”日本語”の真下あたりに”+”ボタンがありますので、これを押します。
 上記スクリーンショットで”日本語”を選択します。
 すると以下のように、日本語(Mozc)が選択できますので、これを選択して追加します。

 入力ソースの優先順位として”日本語”の次に”日本語(Mozc)"が表示されます。

日本語(Mozc)を選択した状態で、 入力ソースを追加する”+”の横の”⬆”を押し、日本語(Mozc)の優先順位を”日本語”の上位に持ってきます。

以上の処理を完了させた後、logout/loginを行うとiBus-mozcを使用した日本語入力が可能となります。

以上で、日本語化残処理はすべて完了します。

 6.Pop!_OS 18.10の追加設定

 これ以降はオプション設定です。

1)ソフトウェアソースの変更

さてまずは、ソフトウェアソースの変更に関して。

Ubuntu repositoryは、初期設定段階だと、米国に置かれたサーバーとなっています。このままだと、アップデートやインストールが遅くなるため、国内ミラーにしたい所ですが・・・。

米国に固定されていて変更できない・・ので、直接repositoryの編集を行っても良いのですが、今回はsynapticを使って行います。synapticは、per-install対象ではないため、インストールが必要です。インストールが完了しているものとして投稿を進めます。

 設定→リポジトリを選択するとrepository一覧が表示されます。

http://の直後の頭が”us"になっているrepositoryをすべて"us"から"jp"に書き換えます。
これで、再読込を実行すれば、以降、Ubuntu repositoryに関し日本のミラーサーバーが使われる事になります。

2)パネルの時刻フォーマットや、外観(各種テーマ)の変更

Pop!_OS 18.10のデスクトップ上部に表示されるパネルの時刻フォーマットの変更や、外観(各種テーマ)の変更は、”設定”では行えません。
これらを行うためには、gnome-tweak-tool(Gnome tweaks)のインストールが別途必要となります。

インストール後のgnome-tweak-toolの呼び出しは、tweaksで・・

例えばパネル上の時刻の表示箇所で、日付が欧米風の並びとなっており見苦しい・・ということであれば、以下のように日付箇所をOffにし、更に、時刻は秒まで表示させたいのならば、秒の箇所をOnにするといった感じです。


他Gnone-tweak-toolを使用すると、外観の変更等、”設定”(gnome-control-center)で設定可能な基本事項以外の設定変更が行えます。このあたりは一般的なgnome3環境と同じです。

7.最後に

Pop!_OS 18.10の評価としては、

開発環境としての機能性:A、インストール・日本語化の平易性:B+、安定性:A

となります。Hyper-V仮想環境下での動作しか確認できませんでしたので、軽快性に関する評価はありませんが、型落ちCPUを使用したマシンの場合、軽快性がAランク・・というわけにはいかないと思います。

開発向けDistributionという用途特価型であり、一般使用環境として見た場合は、おすすめの対象には入りませんが、読者が開発者の場合は、充実した開発環境という観点でおすすめの部類に入ってきます。また、開発に使用するマシンは一般的に最新のものを使う事が多く、この場合は、軽快性はAランクかB+まで評価は上がってくるでしょう。

開発者やCreatorに対しては、おすすめの一本という所でしょうか。。










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